⒊ 居睡

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 舞莉は明確な原因が分かっていた。 『毎晩のセグレートでの練習だ……。』  サックスに移動したことにより、パーカスの時よりも練習時間が増えていたのだ。  睡眠時間の確保のため、練習は1日おきだった。が、舞莉の意思で毎日に変更した。  カッションやバリトンは、舞莉が授業を受けている時は寝て、部活が始まる時間までには起きて、舞莉に教えてくれている。セグレートでの練習の後も起きていて、今日の振り返りや明日の練習メニューを考えてくれているらしい。  睡眠時間を削って上達した代償に、ツケが回ってきたのだ。 「また寝てるよ。」  どこからかのささやき声にも目を覚ます。 「え、また? さっきの時間も寝てたじゃん。」  寝てはいけない、そんなの分かりきったことだ。でも、セグレート練習を減らすことはできないし、みんなに追いつくにはまだまだ遠すぎる。  あと……自分から言い出しておいて、今さら「やっぱりキツい」なんて言えない。バリトンにだいぶお世話になってるし、夜中に私の机を借りて、「今日はここまで進んだから……」などとつぶやきながらノートに書いているのを知っている。  そもそも、2人は私が授業中に寝ていることすら知らないと思うけど。  寝てすっきりした舞莉は寝ていた分の板書をとった。しかし追いかけている途中に、またミミズが這ったような字になり、目が塞がる。 「きりーつ!」  ハッと起きて、立ち上がる。  授業が終わってしまった。まだ板書は取り終わっていない。急いで書き写すも、日直に容赦なく消された。  ノートを写させてくれるような友だちもいないので、これは完全に終わった。
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