眠る

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眠る

 香ばしい味噌のにおいが鼻をかすめて、何かが焼ける音が聞こえてくる。 切り身の油が落ちたのかじゅわあっという音がしばらく続いていくと、今度は野菜か何かを切る音が部屋に響いてきた。 とんとんとん、とまな板に包丁が当たる音色がここちよくて閉じた瞼からさらに意識が遠のいていきそうになる。 ピーピーっと電子音が控えめに鳴って、すぐ後にカパッとふたを開ける音。 炊飯器だろうかと考えている間に、ふんわりと和風の味付けと、野菜や米特有の甘さが混ざった、優しい香りが漂った。  食欲をそそる香りに、自然と想像力が働いて、音や漂う匂いから何を作っているのか想像せずにはいられない。 料理のことを考えているうちに口の中ではよだれがじんわりたまってきた。そろそろ身体を起こすべきだな。 でもなぜか目はどうしても開かない。この眠気が私を開放してくれないのかもしれない。 「ご飯、できた。」  そういって彼女は器に盛った料理を食卓へ運んでいった。 スリッパが地面にこすれる音がしてゆったりと歩いてくるが、彼女が起こしてくる気配はない。 起こしてもらえないと起きられないのだがと思いつつも、自身でどうにか目を覚まそうと奮闘してみる。 いくら踏ん張っても目が覚めず、身体を起こすことさえ億劫だ。 いったいどうしたものかと悩み、早く彼女の手料理を食べたくて、いらだちが増してきた。 早くしないと食事が終わってしまうと焦り、私はつい声を上げた。
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