コイゴコロ

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その日を境に、私は十夜さんの部屋に頻繁に出入りするようになった。元々、十花ちゃんを私の方の部屋に招くこともあったんだけど、十夜さんに会うために私の方が彼の部屋に行くことが増えたんだ。といってもね。隣の部屋だからあんまり関係ないかもしれないけど、ここは気持ちの違いだよ。 私が彼の部屋に行くっていうことに意味があるんだ。 私の使う時間は誰かの為のものになった。私自身に、十夜さんに、十花ちゃんに。朝起きて眠るまでの時間は誰かの為に割かれているの。だから浮気なんてしちゃダメなんだよ。せっかくの誰かの為の時間に他の人を浮かべるなんて、もったいないよ。時間は有限だって、有名な人が言っていたでしょう。生きている人の時間には限りがあるんだよ。その貴重な時間を割くんだもん。誰の為にも、自分の為にさえならない時間は要らないんじゃないかって、私は思うんだ。誰かの為の時間に違う人が浮かんでいたら、それはもう誰かの為だけの時間じゃない。 だから、私は浮気は絶対にしないし許さない。付き合うことになった日に十夜さんにも言ってある。彼は厳しいなって笑って、自分もしないと誓ってくれた。 ほら、純粋な男女の恋愛話って思うでしょ? 違うんだな、それが。 私も十夜さんも浮気はしないよ。 だから、あの話をしっかりしたの。 十花ちゃんとのこと。 十夜さんの妹である十花ちゃんは、お兄さんである十夜さんのことが好き。それは彼女からは言われてないけど、きっと異性として好きということ。 そうだよね? そうだよ。 私たちは二人で確かめあった。 もし私の思い違いだったらって気持ちもあったけれど、十夜さんも同じ気持ちだった。認識の違いは後でとんでもないスレ違いを招くんだって、恋愛の先輩が言ってたよ。些細なことでも言葉にしなきゃ、他人には通じないんだってさ。通じ合いたい相手なら、尚更丁寧に伝えないと勘違いしちゃうかもしれない。 だから、十夜さんに確認したの。 まあ、結局それも後日十花ちゃんにバレて、「五花お姉ちゃん、ひどい! あたしの純粋な気持ち、疑ってたの?!」って怒られたんだけど。十夜さんの方も同じ様に怒られたんだって。 私が思うに、十花ちゃんも十花ちゃんでちゃんと言ってくれてなかったと思うんだ。大好き! 大好き! って言いながら、その「好き」の意味を伝えてくれなかった。彼女は拒絶されるのが怖くて、妹として、友人として好きっていう言葉に本当の自分の「好き」を隠してたんだ。 ほんと、変なとこでそっくりだよね。十夜さんと十花ちゃん。そんなこと言うと、私も人のこと言えないだろって言われちゃうんだけどさ。 それでもね。私たちは三人仲良くまぁるく納まったんだよ。 好奇心とか浮気とか、そんな言葉で否定しないで。私たちの気持ちはまっすぐ二人に向いている。真剣に、向き合っているんだよ。 だからね。みんな、聞いて。 私、好きな人たちができたんだ。 その人たちは隣の部屋に住んでる人たち。 十夜さんはいっこ年上の花屋に勤めてるお兄さん。 十花ちゃんは同い年の花の香りがするお嬢さん。 私たちは、3人で付き合い始めました。 よろしくね。私の素敵なダーリンとベイビー。
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