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探検。
「もう、止めよ。居るわけない」
「うるさい!逃げちゃうだろ」
「この辺りはアキタフキが特別、多く自生してるんだ」
「伝説の条件に、ぴったりじゃないか。」
アキタフキは、北海道だけにある大きなフキ。
茎は太くて、旨い。
葉も当然、大きい。
フキの下に小人が居るなんて伝説も、そこから生まれた。
「静かに、そっと探せよ」
「ジセイって、何さ?」
相棒の声に、少年の動きが止まる。
「そんな事も知らない?」
がさがさとフキの中を相棒に近づく。
彼らは小学2年。
まだ伝説を信じても、おかしくない年頃。
「自生は、その…勝手に生えて来る事だ」
「雑草みたいに?」
「そう、雑草。」
「でも、ここ。誰かの山じゃないの?じいさんが言ってた。」
「シユウチって、いうんだって」
「勝手に生えたフキを荒らしちゃ、怒られる」
「このアホが!自生を知らないのに、なぜそんな
難しい言葉を知ってんだ!」
「ワアッ、暴力反対」
その時、ポトンと雫が顔に当たった。
*****
「ヤバい!降ってきた。傘は?」
「そんなの持てば、目立つから置いて来た」
「バカか?雨なら、捜索も出来ないだろ。」
「ソウサクって何?」
「バカか?もういい、折りたたみくらい持てよ」
*****
カサッと、小さな物音がした。
[そんなに乗り出すと、バレるわよ]
[平気、平気。それより凄い雨だなぁ]
バラバラと雨粒が蕗の葉を叩く。
雨粒は話す2人の体ほどあり、大きな音を立てる。
[それより本物だ。ねぇ、見ないの?]
[やだ、人間じゃない!]
「ぎやあー、本降りになってきた」
「止めやめー!帰るぞ」
「えー、雨宿りは?」
「そんな所が、あるか」
「せめて、この蕗を傘替りにしようよ」
「アホ、そんなの傘になるか」
「だってコロボックルは、蕗を傘にするんだよ。」
「戻るぞ、ほら走れ!」
「服がずぶ濡れになる、母さんに叱られるよ~」
******
[不便だね、人間って。僕ら蕗の下で、雨宿り出来るのに]
彼らはコロボックル。
蕗の下の小人。
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