探検。

1/1
前へ
/11ページ
次へ

探検。

 「もう、止めよ。居るわけない」 「うるさい!逃げちゃうだろ」 「この辺りはアキタフキが特別、多く自生してるんだ」 「伝説の条件に、ぴったりじゃないか。」 アキタフキは、北海道だけにある大きなフキ。 (くき)は太くて、(うま)い。 葉も当然、大きい。 フキの下に小人が居るなんて伝説も、そこから生まれた。 「静かに、そっと探せよ」 「ジセイって、何さ?」 相棒の声に、少年の動きが止まる。 「そんな事も知らない?」 がさがさとフキの中を相棒に近づく。 彼らは小学2年。 まだ伝説を信じても、おかしくない年頃。 「自生は、その…勝手に生えて来る事だ」 「雑草みたいに?」 「そう、雑草。」 「でも、ここ。誰かの山じゃないの?じいさんが言ってた。」 「シユウチって、いうんだって」 「勝手に生えたフキを荒らしちゃ、怒られる」 「このアホが!自生を知らないのに、なぜそんな 難しい言葉を知ってんだ!」 「ワアッ、暴力反対」  その時、ポトンと(しずく)が顔に当たった。 *****  「ヤバい!降ってきた。傘は?」 「そんなの持てば、目立つから置いて来た」 「バカか?雨なら、捜索も出来ないだろ。」 「ソウサクって何?」 「バカか?もういい、折りたたみくらい持てよ」 ***** カサッと、小さな物音がした。 [そんなに乗り出すと、バレるわよ] [平気、平気。それより凄い雨だなぁ] バラバラと雨粒が蕗の葉を叩く。 雨粒は話す2人の体ほどあり、大きな音を立てる。 [それより本物だ。ねぇ、見ないの?] [やだ、人間じゃない!] 「ぎやあー、本降りになってきた」 「止めやめー!帰るぞ」 「えー、雨宿りは?」 「そんな所が、あるか」 「せめて、この蕗を傘替りにしようよ」 「アホ、そんなの傘になるか」 「だってコロボックルは、蕗を傘にするんだよ。」 「戻るぞ、ほら走れ!」 「服がずぶ濡れになる、母さんに叱られるよ~」 ****** [不便だね、人間って。僕ら蕗の下で、雨宿り出来るのに] 彼らはコロボックル。 蕗の下の小人。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加