もう少しだけ

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それなのに今、栗田に告白されたことで、あたしは新しい恋に引きずり込まれてしまったのだ。 そしてそのことが、あたしに新しい世界を見せている。 あたしがこれまで頑なに見ようとしなかった世界を。 あたしが今いて、でも大好きだった彼がいない世界を。 あたしは隣の栗田をちらりと盗み見る。 あたしは、本当は気付いていたのだ──この世界にも素敵なことがたくさんあること、素敵な人がたくさんいることに。 でもだからこそ、あたしはこの世界を見たくなかった。 見れば夢中になってしまうとわかっていたのだ。 そしてそうなればきっと、あたしは大好きだった彼のことすら、頭の片隅へ追いやり忘れ去ってしまう。 それが自分でわかっていたから。
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