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「──ねえ」
相変わらず降り続く雨を見つめながら、あたしは栗田に話しかける。
「雨って好き?」
予想外の質問だったのだろう、栗田は思わずといったふうにこちらを見た。
「まあ、嫌いじゃない……かな」
そう言ってまた視線を正面に戻す。
それから、「俺たちを結び付けてくれたのも雨なわけだし」と口の中だけでもごもご言った。
たぶん、栗田はあたしには聞こえていないと思っている。しっかり聞き取れちゃったけど。
もしかしたら、栗田は栗田で、私とは違う雨の魔法にかかっていたのかもしれない。
あたしのが素直になる魔法だったとしたら、栗田のは大胆になる魔法だろうか。勇気が出る魔法かもしれない。
でもきっとどちらも、雨を無条件に疎ましく思う人にはかからない魔法だ。
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