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あたしはそっと栗田を盗み見た。
じっと雨を見つめているように見えるけど、たぶんポーズだと思う。
ほんとはいろいろ考え事をしているに違いない。
だからあたしは、もう少しだけ雨の魔法に振り回されてみることにした。
こういうのを「魔が差した」って言うのかな、なんて思いながら。
そろりと一歩、また一歩と左へ──栗田の方へとにじり寄る。
目が合ってしまってはかなわないので、もちろん視線は前を向いたままだ。
そしてすぐ隣まで移動すると、あたしは左手の甲を、栗田の右手の甲にそっとくっつけた。
「──!?」
栗田が驚いてこちらを見たのが気配でわかる。
でもあたしは、素知らぬふりで雨を見つめ続けた。
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