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結局、二人は水色の傘を差して帰っていった。
二人の姿が見えなくなるや否や、あたしは急いで傘立てに駆け寄る。
わかってはいたけど、やっぱり傘立てはもぬけの殻だった。
「はあ……」
思わずため息が出る。
ものすごくプラスに考えるなら、傘がなくて帰れない人間が二人から一人に減ったのだからよかったと言えるかもしれない──だけど。
二度目のため息が出そうになったその時だった。
「──お前、傘ないの?」
突然背後で声がした。
驚いて振り向くと、そこには一人の男子──これまた同じクラスの栗田が立っている。
「ないっていうか……うん、ない」
ほんとはあったんだけど──なんて取り繕っても仕方ない。
あたしは素直に認めた。
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