もう少しだけ

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もう少しだけ

「もう最悪! 雨とか聞いてないし!」 「ないわあ。傘とか持ってきてないのに」 昇降口の軒下でわいわい言い合っているのは、同じクラスの塩見さんと山内さんだった。 彼女たちの言葉通り、外はザーザー降りの雨。 そして昨日見た天気予報が当たれば、この雨は真夜中まで降り続く。 あたしはちゃんと傘を持ってきたけど、その傘は今二人のすぐそばの傘立てに差してあった。 (うう、出て行きづらい……) 傘を持っていない二人を尻目に自分だけしれっと帰るなんて、さすがに感じ悪すぎると思う。 かといって、三人じゃ相合傘っていうのも無理だし……。 これはもう、二人が校舎に引き返すか雨の中へ飛び出すかするのを待つしかない──なんて思った瞬間だった。
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