必然

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必然

俺の名前はヒロ。大手ゲーム会社ヒュプノスゲージが開発した「ボーナスメモリー」というゲームの固定キャラをしている。このゲームは一般には公表されておらず、ヒュプノスゲージが選んだ50名しかプレイヤーがいない。最初にゲームクリアしたプレイヤーには賞金10億円が贈られるそうだ。値段がおかしいよな。話の流れは世界を絶望と暴力で支配する魔王を倒すために旅に出るという王道ストーリー。60体の固定キャラから自分の分身を選んでクリアを目指す。 唯野博士(俺の製作者)は楽しんでおいでって言ってたけど・・・無理だろコレ。こげ茶色の髪と目に良くも悪くもない顔を持ち、田舎の農家出身というモブを絵にかいたようなキャラクターそれが俺だ。周りはドコを見ても派手派手派手!ステータスも高い。どうなってんの?俺弱すぎない?地味すぎない?俺だけバグってんの?格差ありすぎない?50名しかいないプレイヤーに対して60体のゲームキャラということはどういうことかは察して頂きたい。皆10億円を手に入れるため、俺みたいな地味なうえに初期値が全ステータスレベル1のキャラクターを選ぶわけない。終わった・・・。プレイヤーが来る前からお通夜モードに入っているうちに一通りの説明を受けたプレイヤーたちがたくさんのガラス窓のようなところから俺達を覗き込んでいた。大体のプレイヤーは気に入った見た目のやつからステータスをみて吟味している。 おい今笑っただろ!失礼なやつだ!表出ろゴラ!! 大体のプレイヤーが俺を鼻で笑った後他のキャラクターを選んでいった。・・・分かっていたが正直悲しい。親を悪く言いたくないがもうちょっと強く作ってほしかったな・・・。 打ちひしがれているとドコからか視線を感じる。キョロキョロと辺りを見渡す(プレイヤーには先程と変わらず突っ立ってるように見える)と俺から斜め右の窓から俺をじーーと見る奴がいる。そいつと目があったとき俺はゲームキャラであったことを感謝した。そうじゃなければ醜態を晒していたに違いない。 美しい黒髪。切りそろえられた眉。切れ長の瞳に長い睫毛、形のいい唇に高い鼻。それらが均等に配置されたガラス越しでも損なわれない顔面の美形がそこにいた。 え?何この顔面。顔面偏差値カンストしてる。完璧すぎない?ゲームキャラ?心の中で叫んでいると自分の口が開いた。 「俺はヒロ。よろしくな!」 え?なんで俺声出してるの?しかもこのセリフ選ばれたときに出るやつなんだけど・・・。は?はああああああああああああああああ!? 『お前絶対間違えただろう!!』
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