612人が本棚に入れています
本棚に追加
第1話 双六の真髄
ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ 併せて”双六”。
今日も隣人のカスタネットの騒音で目を覚ます。
起きるやいなや双六を始める俺。
相手は吉村さん。いつの間にか部屋にいたストレンジャーだ。
奴から二日放置した唐揚げの臭いがプンプンするが、
全く動じない俺。我ながら立派である。
先攻は吉村さん。奴のTシャツには『如何様命』と記されている。
二分後、賽を振る度に奇声を発するため、失格となった。
いよいよ俺の番だ。この日のために作った二面賽を取り出す。
まず回らない。加えて、両面とも1の目という最弱の代物。
メリットは皆無。しかし、それを使う意志を頑なに曲げない俺。
我ながら恐れ入る。
おっと、消灯の時間だ。双六はここまで。
吉村さんの表情が曇る。そして、涙という雨が降る。
これぞ夏の風物詩『吉村の夕立』。正直、反吐が出る。
感動を伝えるために、奴の顔面に七味唐辛子を振りかける。
効果は抜群のようだ。おやすみなさい。
ぐっすり眠れる気がしてならない。
最初のコメントを投稿しよう!