第1話 双六の真髄

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第1話 双六の真髄

 ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ 併せて”双六”。 今日も隣人のカスタネットの騒音で目を覚ます。 起きるやいなや双六を始める俺。 相手は吉村さん。いつの間にか部屋にいたストレンジャーだ。 奴から二日放置した唐揚げの臭いがプンプンするが、 全く動じない俺。我ながら立派である。 先攻は吉村さん。奴のTシャツには『如何様(いかさま)(いのち)』と記されている。 二分後、賽を振る度に奇声を発するため、失格となった。 いよいよ俺の番だ。この日のために作った二面賽を取り出す。 まず回らない。加えて、両面とも1の目という最弱の代物。 メリットは皆無。しかし、それを使う意志を頑なに曲げない俺。 我ながら恐れ入る。  おっと、消灯の時間だ。双六はここまで。 吉村さんの表情が曇る。そして、涙という雨が降る。 これぞ夏の風物詩『吉村の夕立』。正直、反吐が出る。 感動を伝えるために、奴の顔面に七味唐辛子を振りかける。 効果は抜群のようだ。おやすみなさい。 ぐっすり眠れる気がしてならない。
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