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第70話 ハンドメイド健康診断
参式熟語スロットで再戦だ。
安本孝に根こそぎ取られたままでは帰れない。ラスト10万ドルで俺は勝つ!
一列目『安』。二列目『本』。既視感が否めない。
ところが、前回とは異なり、目が痛むほどに画面が激しく輝き出す。
「激熱リーチが来ましたね。これはチャンスです。ヒャッハー」
生まれながらのギャンブラーである裁判長にも、熱が入っているようだ。
台からは白煙が上がり、本能的に受け付けない機械音が会場を包み込む。
緊張で三列目のボタンを押す照準が中々定まらない。
指先はぶれにぶれ、市川さんの口内へ。
今日は運に恵まれ、指先には小型カメラが付いていた。
名付けて、”手作り胃カメラ”。内臓の調子はどうでしょう。
ああ、いい色。艶やかな赤色は目の保養になる。
奴は健康そのものでした。診察代はいただかないでおきましょう。
逆に俺が鑑賞料として、背負い投げを13本くらわせてあげます。
今度こそ正しいボタンを捉えた。
三列目……『家』。安本家。
安本孝の家系”安本家”。倍率はー70倍。七人家族ですか。
子どもの名前は上から、恒河沙、阿僧祇、那由他、不可思議、裕子。
五人目でようやく正気を取り戻したかと思えば、
当て字にくっきりとした名残が。
カジノの深部からは、SDカードの山が近づいてくるのが見える。
「貴方様が失ったマネーは安本家の養育費へ回されます」
堂々たる癒着。
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