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第78話 夢の共演
独房の中で一週間を過ごした吉村さん。
気の毒なぐらいに元気ハツラツ。
奴は灼熱の顎で暖を取り、今日までを生き抜いてきた。
そして、いよいよ訪れた宝くじ当選発表日。
ラジオで結果を聞くとしよう。
「ハーイ、エブリワン!
ロックな夜をプレゼント・フォー・ユー、永遠の求職者 安本孝です」
無職で5児のイカれ親父がここにまで。すかさず電源切断。
チ チ チ チ ブチッ
何と! 独りでにラジオの電源がまたオンに。
「ハーイ、エブリワン!
セルフでスイッチが入ったら、リスナーはどんなリアクションを
取るのかドッキリ大成功ー!」
背筋が凍る。俺の背中に貼り付けた鮭も急速冷凍されている。
幸か不幸か、これでアニサキスの心配はなくなった。
俺は鮭に齧り付く。硬い。前歯欠損。
「俺の予想だと、
今このラジオを聞きながらペガサスに蹴り飛ばされて、
ユニコーンの角に貫かれた人もいるのかな?
報告お便りどしどし募集していまーす」
横暴ファンタジー。
もし本当にいるとすれば、俺より相当過酷なリスナーだな。
「お、早速お便りが届いております。
一通目は、ラジオネーム 松葉杖エイリアンさん、
改め本名 スミス・J・新村さんからです。
『教祖 安本様、いつも楽しく拝聴しています。
一つ質問があって、ラジオとはどういう物なんですか?
回答は早めにした方が身のためですよ』
イェーイ」
情報過多。
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