613人が本棚に入れています
本棚に追加
第79話 共感なんて関係ねぇ
安本孝のラジオ放送は続く。
「では、松葉杖エイリアンさんの質問に答えましょう。
ラジオとは、あなたの聞いているそれです。以上」
適切かつ的確な「以上」のイントネーション。
これほどまでに美しい「以上」を耳にしたことはない。
「以上~」
オペラ歌手に軍配。
記録は瞬時に塗り替えられるものである。
「二通目のお便りを読んでいきたいと思います。
こちらは、ラジオネーム スミス・J・新村さん、
改め本名 松葉杖エイリアンさんからです」
逆パターンもあるのか。
『衝撃!! 松葉杖エイリアンは実在した!!』
明日の朝刊の見出しは、これで決まり。
「『我々ハ宇宙人ダ。地球侵略作戦ヲ只今ヨリ遂行スル。
手始メニ世界中ノ松葉杖ヲ買イ占メルトシヨウ』」
迫り来る脅威が嫌がらせの域を出ていない。
「スミス・J・新村さん、楽しいお便りをありがとうございました!
松葉杖の先端って時たま、松茸の香りがしますよね。
共感できたリスナーはラジオを電源から切ってください!」
共感できなかったが、切断。
チ チ チ チ ブチッ
予期した通りの再接続。
「おっと、今週の宝くじの当選発表がまだでした。
当選文字列は……」
ズザーーーーーーーーーー
肝心なところで電波障害が。
出禁のメカニック 三郎に修理を依頼しよう。
奴は脇から工学の専門書を取り出した。
「三郎は今から勉強するつもりではないだろう」
飼い主の吉村さんはそう言い張る。
ならば、何をする気だ?
最初のコメントを投稿しよう!