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第86話 アグレッシブ・サービス
強行突破の先に待ち受けていたのは、手厚い歓迎。
駅の中に入るやいなや、俺たちは煌びやかな応接間へ導かれた。
見るからに柔らかいソファに、市川さんが一番乗りで座る。
「そのソファにまだ座っては……」
駅員の忠告も空しく、既に奴の口には、
正対する壁から発射された大量の腐敗済みフライドチキンが詰め込まれていた。
それに加え、ソファの背もたれからは強力な紫外線が放射され、
日焼けした市川さんの肌の色が一瞬で真っ茶に。
もてなし方がアメリカンダークサイド。
「一足遅かったですか……。
まぁ、もう過ぎたことなので仕方ないですね。
開発途中ではありますが、美戯仁宮秘蔵の
”フレッシュフィッシュ&UVカットサービス”はご堪能いただけましたか?」
要調整。完成は程遠い。
ノベラビ列車の発車時刻まで、あと五分と迫ってきた。
切符を改札に通し、プラットホームへ入場する。
お、この駅には空港のようなゲート型金属探知機もあるのか。
幸い今は、金物を何も身に着けていないため、支障なく通過はできるだろう。
ピピーッ!
え! か! き! う! た! の! じ! か! ん! だ! よ!
違います。しかし、なぜ探知機が反応したのだろうか。
「お客様、こちらは水分探知機となっております」
それでは皆に反応する。生物は水分で構成されているようなものだぞ。
後方から誰かが汗を垂らして走ってくるのが見える。
「おーい、待ってくれ! おいらも列車に乗るでな~」
扱いにくい水分がやってきた。
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