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第95話 同音異義語判別不可能症候群
「人はいくらでも間違いを犯す。早まるな」
麺弁当を想像しなかっただけで他界を考えるほど憔悴はしていない。
でも、吉村さんに慰めてもらったおかげで、ピクニックに行く気にはなったよ。
一通り見て回ったことだし、ノベラビ列車に戻ろ……
うわっ! デコピンでの奇襲はやめてくれ、吉村さん!
若気の至りで昔、額に注射したヒアルロン酸が飛び出してしまうから!
万に一つでも飛び出せば、
慰謝料として『次回の慰謝料2倍頂戴券』を一枚請求する。
そして、次回は慰謝料が2倍なので、同じ券を2枚請求。
次々回は4倍につき4枚、またその次は8倍で8枚と、
回を重ねるに連れて、貰える券の枚数がどんどん倍に増えていくのだ。
ゆくゆくはこれらの券を元手に焚火をしよう。
紙は燃料として使うのが、やはり原点にして頂点。ブラボー。
だけども、例え俺が顔面に七味唐辛子をかけようと、
一切怒りを露わにしなかった奴がなぜ今に限って?
「かわせ!」
証券取引所で飛び交っていそうな声が聞こえた。
俺の直感によれば「為替!」だが果たして。
「躱せ!」
直感よりも状況判断。この場面で株価を気にする者がいるはずないか。
ん? おかしい。現在、デコピンを仕掛けてきているのは吉村さん。
しかし、「躱せ!」の声の主も確かに吉村さんなのである。
その上、声は俺の後ろ側から耳に届いた。
つまり、どちらかの吉村さんは……ドッペルヨシムラー!
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