第98話 あちきの自慢

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第98話 あちきの自慢

 二人の吉村さんは声質まで全く同じであるため、 奇声で区別するのは不可能に近い。 双六も駄目、奇声も駄目、なら他に何が残っている? 「今こそ、あちきの腕の見せ所や」 その一人称は……プリンセス椿! あれほど帰宅するよう念押ししたつもりであったが、 まさか海老反りによる腰への負担で一歩も動けなくなっていたとは。  「これを見てみぃ。ふっ、あちきを信じな」 プリンセス椿が手に持っているのは、全て一択問題の筆記試験、 椅子に座ることだけが求められる面接試験、 そして、呼吸技能試験を満点で通過した者のみに与えられるという 幻の”第一種吉村判別免許”! これは、保持者が、あらゆる吉村さんを本当に吉村さんであるのか、 あるいはドッペルヨシムラーであるのかを 二分の一の確率で当てられることを保証するものである。 二分の一? それなら非保持者と変わらないではないか! そう思ったそこの君、目ざといな。 いや君じゃなくて、俺から見てその右の左の左の右の君、そう最初の君だ。 からかって済まない。 現に今は、持つ意味の無い免許を得意げに見せている プリンセス椿の滑稽さを笑う時間なのだ。どうぞ心ゆくまでごゆっくり。  また、試験の合格率は脅威の99.9%。 俺が唐揚げを食べるときに、 ドライレモンを絞ってかける確率と全く同じ。 いや、『絞る』と言うよりは、『砕く』と言った方が適切か。 「ほれ、おいらのこれも見てほしいでな」 十二右衛門が掲げているのは、第一種吉村判別免許の不合格通知。 0.1%と出会えた奇跡に感謝。
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