第99話 筆と銀

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第99話 筆と銀

 辱められし者 プリンセス椿が下す吉村ジャッジ。 左と右、どちらの吉村さんを選ぶのか? 奴が指差したのは……市川さん! え? どういうことだ? 市川さんが吉村さんなのか? 「バレては仕方がないな」 市川さんが右手で自分の顔を撫でると、その顔は吉村さんに替わっていた。 「いかにも俺が、宇宙を創造せし者 吉村良男さ」 神だ。とても、人間の為し得る業ではない。 市川さんの真の姿は、吉村さんの顔をした神であった。  それなら、あの二人の吉村さんは何者なのだ? 「銀 銀 銀銀 銀銀銀」 そう言って左の吉村さんが同じように顔を撫でると、 その顔はペンギンに替わっていた。 大して驚きはしないが、ペンギンの鳴き声は金属音なのか。 祖父母から「ペンギンの鳴き声は『筆』か『銀』じゃよ」と 毎晩聞かされていたが、『銀』の方だったとは。 惜しくも俺の『筆』予想は外れた。 悔しいので、地団駄を踏もう。ダンダン。  「(ペン) (ペン) 筆筆(ペンペン) 筆筆筆(ペンペンペン)」 おぉ! 右の吉村さんの発したこの声こそが、俺の想像するペンギンの鳴き声だ。 遂に思い描いたペンギンとのご対面。 身だしなみを整えておかねば、失礼に当たる。 軽く首を締めなおして、と。うぇっ。苦しい。 いよいよ右の吉村さんが顔を撫でると、 その顔はペンギンではなく、銀河寿司の大将に替わっていた。 お久しぶりです。
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