野上陽菜 ④

1/1
前へ
/9ページ
次へ

野上陽菜 ④

 着いたのは高級百貨店。 「ここなの」  美咲は陽菜の手を引き百貨店の中に入ると、ある化粧品売り場の前で立ち止まった。 「ここ…なの?」 ここって、化粧水が一本何万円もするお店…。 「直美さん、こんばんは!いつものセットいただけますか?今日は友達にプレゼントしたくて」 「お友達にプレゼント…ですか?それは…羨ましい…。私も美咲さんのお友達になりたいです。勿論、プレゼントなしのです」  直美は嫉妬からギロッと陽菜を睨みつける。 「あら、私はもう直美さんとお友達だと思っていたんですが、違ったんですか?」 「!そうでしたね。もう友達でしたね」  直美の顔は幸せいっぱいの表情になり、美咲がいつも使っている基礎化粧品のセットを出す。 「じゃあ、これをプレゼント包装していただけませんか?」 「え!?」 「え!?」  陽菜と直美は同時に驚きの声を上げた。 「これを陽菜さんにプレゼントしたくて…受け取ってもらえる?」  美咲の瞳は『お願い!』というかのように揺れている。 こんな高級な物を…。 私なんかに…。 「どうか受け取って」 「そうですよ。美咲さんがここまでおっしゃっているのですから、受け取ってください」  直美は素早く梱包すると、陽菜に袋を手渡した。 そんな…。 そんな…。 「ありがとう。大切にする」 「私も愛用してる物だから、また使い方教えるね」  ニコッと美咲が笑う。  陽菜は震える手で袋を受け取ると、嬉しさのあまり泣きそうになった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加