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野上陽菜 ④
着いたのは高級百貨店。
「ここなの」
美咲は陽菜の手を引き百貨店の中に入ると、ある化粧品売り場の前で立ち止まった。
「ここ…なの?」
ここって、化粧水が一本何万円もするお店…。
「直美さん、こんばんは!いつものセットいただけますか?今日は友達にプレゼントしたくて」
「お友達にプレゼント…ですか?それは…羨ましい…。私も美咲さんのお友達になりたいです。勿論、プレゼントなしのです」
直美は嫉妬からギロッと陽菜を睨みつける。
「あら、私はもう直美さんとお友達だと思っていたんですが、違ったんですか?」
「!そうでしたね。もう友達でしたね」
直美の顔は幸せいっぱいの表情になり、美咲がいつも使っている基礎化粧品のセットを出す。
「じゃあ、これをプレゼント包装していただけませんか?」
「え!?」
「え!?」
陽菜と直美は同時に驚きの声を上げた。
「これを陽菜さんにプレゼントしたくて…受け取ってもらえる?」
美咲の瞳は『お願い!』というかのように揺れている。
こんな高級な物を…。
私なんかに…。
「どうか受け取って」
「そうですよ。美咲さんがここまでおっしゃっているのですから、受け取ってください」
直美は素早く梱包すると、陽菜に袋を手渡した。
そんな…。
そんな…。
「ありがとう。大切にする」
「私も愛用してる物だから、また使い方教えるね」
ニコッと美咲が笑う。
陽菜は震える手で袋を受け取ると、嬉しさのあまり泣きそうになった。
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