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「私、明日の講義は午後からなのよ。だから、諒ちゃんさえよければ、朝まで遊んであげようかなって思ってるんだけれど」
彼に犬の耳があったなら、いまぴんと立った。
県立大学の彫刻科に通う沙璃は夏のグループ展と卒業制作を控え最近はなにかと忙しい。諒の館に泊まることはあっても一晩を彼に与えられることはそうないのだ。
「あの、僕も明日はなんの用事もありませんから……」
声は恥ずかしげに先細る。なにせ、朝までいたぶってほしいというお願いだ。
その姿に愛らしさを感じながら、手を頭頂に置いた。
「その代わり、あなた今晩犬だからね」
「……なにをどうしろと言うのです?」
ほっそりとした裸身を晒しながら彼は怯えた様子でこちらを窺う。脱いだばかりの寝衣を下肢の上で抱え、除毛されたそこを隠そうとするのがいじましい。その白絹を右手で乱暴に剥ぎながら、沙璃は首を傾げた。
「犬とごろごろしたいの。コリーやヨーゼフと一緒に転がってる写真って楽しそうじゃない? 私、ずっと賃貸でアパートが多かったから、犬、飼ったことがないのよね」
「犬がお好きなのですか?」
「別に。けど、あなたと遊んでいると犬も良いかなって思うわ」
「僕は、人間ですよ?」
しゅんとした様子は耳と尾を垂らした犬を思わせた。
可愛らしくなって、鼻先に軽くキスを落す。
「――っ!」
彼はびくりと身を引かんばかりの驚きを見せた。
「さ、沙璃様っ……」
頬は桜色に染まり、胸の上下が明らかに目視できるほど彼の鼓動は速まっていた。
十代の少年だってこんな反応はすまい。
「なによ、犬にキスしてなにか問題がある?」
「ぁ……い、いえ……」
美酒に酔ったように双眸は蕩け、細く喘いだ息が唇から細く洩れている。
脚の間のそれは早くも色をまとい頭を擡げていた。
――キスだけでこんなになるなんて、このひと私と寝たら死ぬんじゃないの?
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