オン・ザ・ロード

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私の部屋は台所とバスルームのついたワンルームのマンションで、広いとはいえないけれど、部屋の真ん中に置かれたソファーや床になんとか5人座れた。 冷蔵庫から、誕生日ケーキを出して持って来て、テーブルの上に置いた。 「まあ、素敵じゃない」と、ママが歓喜の声を上げ、手を叩きその場で座りながらとびはねた。 「ロウソク何本立てるの?」なにくわぬ顔で知美が聞くと、「1本でいいわよ」とママが言った。「だって、ここで低酸素脳症で倒れても、アンタたち誰も私に人工呼吸器してくれないでしょ」 「そりゃそうね」 「考えただけでもキモイ」 ふと、ママの顔つきが寂しそうになる。 「ママ冗談だってば」 ママがにっこりして、「ごめんなさい、私ったら、今、こいつらと思っちゃった」そして「もう修業がたりないぞ! 私!」そう言いながら、肩をすくめると、自分の頭をげんこつで叩いて「遅かれ早かれ死ぬんだから小さなことは気にしないぞ」自分にそう言い聞かせてまた元気になる。 珠江がロウソクに火をつけて、ハッピーバースデーをみんなで歌い、ママが身をかがめてロウソクを吹き消した。 「ふー」 「おめでとう!」「ママおめでとう!」「おめでとう!」「ママかわいい!」 ママはぶりっこの顔になりながら「今日は、本当にみなさん、ありがとうございます。私幸せです。本当に本当にありがとうございマンモス」そう言って泣いていた。けど、どうも涙が出ていないような気がするから「ママ涙が出てないよ」と言うと、 「ばれた?」 ああいうのは、やっぱりまだ昭和を引きずっているのよね。
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