親父の背中

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「ちづるはどこに行ったんだ?」 もう一度、今度は落ち着いて、おじいさんが言った。 そして、私の方を見て、 「この子は、誰だ」 と父ちゃんに向かって聞いた。 「ちづるの娘だ」 と答えた。私は何が何だかわからなかった。 父ちゃんからは、母ちゃんは私が小さい頃に死んだと聞かされていたのだ。 私が驚いた顔で父ちゃんを見上げると、父ちゃんが寂しそうに笑った。 「カンナももう小学五年生だから、本当のことを話さなきゃなんねえな」 何のこと? 「カンナ、今まで黙っててゴメン。俺はお前の本当の父ちゃんじゃねえんだ」 私の目が大きく見開かれるのをまっすぐ見つめて来た。 「嘘・・・だって母ちゃん死んだって言ってたし、父ちゃんは、父ちゃんだよ」 私は気が動転して、自分が何を言っているのかわからなくなってきた。 「あのな、カンナ。お前は俺の妹の子供なんだよ」 ってことは、父ちゃんは私の、叔父さん? そして父ちゃんは、おじいさんに向かって言った。 「ちづるは、カンナを残して、出て行ってしまった」 「男か?」 間髪入れず、おじいさんは父ちゃんに尋ねた。 父ちゃんの顔が苦虫を潰したみたいな顔になった。 「あまりカンナの前では言いたくなかった・・・」 父ちゃんが俯いた。
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