素質のある者

スーツ姿の男たち

「大変お待たせいたしました。こちらの椅子におかけください。
問診表とファイルをお預かりします。」
スーツ姿の男たちは手際よく資料に目を通してはなにやら確認しているようだ。それから何やら小声で相談しだした。

そんなにぼくは悪いのだろうか。
確かに、ここ最近は健康診断で再検査になっても、病院に行くことを後回しにしていたのを後悔していた。

スーツ姿の男たちは相談を終えると
「生活のストレスチェックをするため、あなたにいくつか質問します。回答しにくい内容でしたら答えなくて結構です。
あなたは、外食が多いようですがひとり暮らしなんですか？」と質問してきた。

「はい、仕事が忙しくどうしても作る時間がなくて。」と答えると、
スーツ姿の男は大きくうなずきながら「大変ですね、ご家族はちかく住んでいないのですか？」と聞かれ、
両親が高いし、一人暮らしであることを伝えた。
それから、仕事について、収入について、借金についてなども聞かれた。
これらの質問は健康診断に関係があるのだろうか。
「ずいぶん踏み込んだことも聞くんですね」と聞くと
「近年は自殺者も多く、念のためお伺いしています」と言われた。

一通り、質問が終わるとまたスーツ姿の男たちは話し合いた。
そして、真剣な面持ちでゆっくりと話し出した。

「あなたは、素質のある選ばれた者です。」と