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「……涼宮。お前さ、最近キ――――」
金村さんはそこまで言いかけて、急に押し黙る。
パイプ椅子の背もたれに身体を預けると、「はぁ。やっぱなんでもない」とため息混じりに呟いた。
「な、なんですか、気になります」
「だからなんでもねーって」
「嘘だ! 絶対なにか言いかけましたよね!? 最近キ、の続きは?」
「あーっ、死んでも言わねぇ! 他の男のためにキレイになったやつに――、っ!」
え? 今、なんて……
金村さんは、しまった、というように口を覆った。
「も……もう一回、言ってください」
「やだ」
「やだ、って子供ですか……!」
「だってお前が最近変わったのは、“レント”とかいう男のためなんだろ!?」
「レン……はぃっ!?」
金村さんが短い襟足を乱暴に掻きながら立ち上がる。
ズンズンとこちらに近づいてきたかと思えば、あっという間に、腕組みをした金村さんの険しい顔が、私のすぐ目の前に。
首筋の香水が、はっきりと香る距離。
いつもより赤みを帯びた耳に……気づけてしまう距離。
トクン、と、胸が震える。
「俺は……口が悪いのは自覚してるし、お前のことになるとどうも放っておけなくて、余計なことばっか言っちまう。悪かった……って思ってるよ。
お前を傷つけて泣かせた俺には、こんなこと言う権利もクソもないってわかってんだ。
だけど、やっぱり…………どーしても我慢ならん!
ソイツがどこの誰だか知らねーけどな、お前の健康より自分の性欲優先するようなやつ、ろくな男じゃねぇ! とっとと別れろ!」
「えぇっ、ななななんですって」
「寝かせてくれないとかなんとか、前に言ってただろうが」
「ひぃ! 違っ……!」
私の迂闊な発言が、どうやら金村さんを激しく勘違いさせてしまっているらしい。
「ち、違うんです、廉斗さまは、そのっ……」
「レントさまぁ……!?」
「あぁぁ、そうじゃなくて! 彼氏じゃないんです!
“廉斗”は……二次元のプリンスさまなんですーっ!!」
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