愛しの三次元プリンスさま。

14/16
226人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「……涼宮。お前さ、最近キ――――」  金村さんはそこまで言いかけて、急に押し黙る。  パイプ椅子の背もたれに身体を預けると、「はぁ。やっぱなんでもない」とため息混じりに呟いた。 「な、なんですか、気になります」 「だからなんでもねーって」 「嘘だ! 絶対なにか言いかけましたよね!? 最近キ、の続きは?」 「あーっ、死んでも言わねぇ! 他の男のためにキレイになったやつに――、っ!」  え? 今、なんて……  金村さんは、しまった、というように口を覆った。 「も……もう一回、言ってください」 「やだ」 「やだ、って子供ですか……!」 「だってお前が最近変わったのは、“レント”とかいう男のためなんだろ!?」 「レン……はぃっ!?」  金村さんが短い襟足を乱暴に掻きながら立ち上がる。  ズンズンとこちらに近づいてきたかと思えば、あっという間に、腕組みをした金村さんの険しい顔が、私のすぐ目の前に。  首筋の香水が、はっきりと香る距離。  いつもより赤みを帯びた耳に……気づけてしまう距離。  トクン、と、胸が震える。 「俺は……口が(ワリ)いのは自覚してるし、お前のことになるとどうも放っておけなくて、余計なことばっか言っちまう。悪かった……って思ってるよ。 お前を傷つけて泣かせた俺には、こんなこと言う権利もクソもないってわかってんだ。 だけど、やっぱり…………どーしても我慢ならん!  ソイツがどこの誰だか知らねーけどな、お前の健康より自分の性欲優先するようなやつ、ろくな男じゃねぇ! とっとと別れろ!」 「えぇっ、ななななんですって」 「寝かせてくれないとかなんとか、前に言ってただろうが」 「ひぃ! 違っ……!」  私の迂闊な発言が、どうやら金村さんを激しく勘違いさせてしまっているらしい。 「ち、違うんです、廉斗(レント)さまは、そのっ……」 「レントぁ……!?」 「あぁぁ、そうじゃなくて! 彼氏じゃないんです!  “廉斗”は……二次元のプリンスさまなんですーっ!!」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!