愛しの三次元プリンスさま。

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 右下の矢印ボタンを、ドキドキしながらタップする。  すると、きらびやかな効果音と共に、すらりと長い指先を折り曲げて私に向かってウインクを投げる、サラサラブロンドヘアの王子様のスチルが画面いっぱいに現れた。 ―――――― My Prince♡白馬(ハクバ)廉斗(レント)♡ 『僕が君に惚れてるって、わかってるんだろう?  全く、ズルい子だな……。 ほら、こっちおいで。 その可愛い唇に、飽きるほどKiss(キス)してあげる』 ―――――― 「っはぁぁぁ……!! 飽きるわけないから永遠にしてぇ~~~ッ」  枕に顔を埋めて、声にならない声で悶え転がる私。  涼宮(スズミヤ)麗子(レイコ)。  今日も今日とて、推しが尊い。  名前負けの人生を歩み続けて、かれこれ26年。  ついでに暴露すれば、彼氏いない歴=年齢。  女子高女子大育ちの、筋金入りのフリー。  飽きる飽きない以前に、ファーストキスすら未経験だ。  でも、だから何だっていうの。  私には、“廉斗さま”がいるんだから!  最近ドハマりしている乙女ゲーム『魅惑(MiWaKu)のプリンスさま♡』通称“ミワプリ”の、白馬(ハクバ)廉斗(レント)さまが。  ……自覚はしてる。  私、若干……というか、かなりイタイ。  女子力が乏しいのは、金村さんに言われなくても重々承知だ。  メイク? お洒落?  そりゃ全く興味がないわけじゃないけど、情熱とお金の注ぎどころが、イケてる女子達とは違うだけ。  化粧品会社で働いているのだって、唯一内定をもらったからって理由だし、仕事はキチンとこなしてるんだから、プライベートで何していようが金村さんに文句を言われる筋合いはない。  だけど……  ――“可愛くねーの!”  どーせどーせ、顔も性格も、可愛くないですよっ!!
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