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「っ、あ……今のは、ワリぃ、そういう意味じゃなくて」
金村さんが、珍しく焦った顔をしてる。
当たり前か。目の前で、部下にいきなり泣かれたら。
自分でも驚いてる。私……何で泣いてるの?
止め方のわからない涙をブラウスの袖で何度も拭う。
こんな時に、品の良いハンカチの一つも持ち合わせていない。
情けないけど、本当に女子失格だ。
私は持っていたファイルで顔を覆い隠した。
「あれぇーすみません、ちょっと今年、花粉症が酷くって…………失礼します!」
「おいっ、」
掴まれた二の腕を、勢いよく振り払う。
「金村さんだけには、言われたくなかった……っ」
「涼宮!」
金村さんの声を振りきって、私は通路の突き当たりにあるトイレに駆け込んだ。
「……っく、うぅ……」
どうしちゃったんだろう? 涙が止まらない。
金村さんが言うことは正論だし、あの人が歯に衣着せぬ人だってこともわかってた。
今までも「ガキじゃねーんだから自己管理くらいしろ」とか「ちったぁ見た目に気を使え」とか、散々なこと言われてきたじゃないか。
鼻を啜りながら、重たい顔をあげる。
パウダースペースの大きな鏡に映った私は、あまりにも酷い顔をしていた。
クマは凄いし、肌はボロボロ、おまけに所々ニキビもできてる。
ゲームにかまけて、睡眠や食事を疎かにしていた代償だ。
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