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「ヘインズさま。あなたをニートと中傷したこと、心よりお詫びいたします。これだけの庭園を作り上げて維持し、品種改良までなさるとは、ご立派なガーデナーもしくは研究者です」
「ただの自己満足。この庭は非公開だし改良の結果だって論文にすらしてない。どんなたいそうなもん作っても、社会に貢献してなきゃニートと一緒だよ」
「そうではなく……ああもう!」
同じく荷物を下ろしたバッシュが、落ち着きなく何度も髪を後ろへ撫でつける。
なんだどうした、似合わない謝罪なんかしたから情緒不安定か。
「おれは、お前が毎日作って来た結果のこの庭を見てすげーと思った。おれ一人ごときって思うかもしれないが、お前は確かに人の心を動かしたんだぞ。それをなぜ卑下するんだ。胸を張るべきことだろ!」
「なんでキレてんだよ!」
いきなり怒鳴られて後ずさる。
胸に手を当てて、飛び跳ねる心臓を押さえるエリオットの様子に、バッシュは額に手を当て、ふーっと長い息をついた。
「……申し訳ありません、取り乱しました」
びっくりした。デカい口でがっと来られたから食われるかと思った。そう言えば、前にベーグルサンド食べてたときもデカい口だなと思ったな。……じゃなくて。うん、どちらかと言うと、こいつからこんなストレートな称賛されたって方が驚きだ。
嬉しいとかではなく、この男も人の子だったんだなと言うか、そう言う方向への驚きと言う感じで。
エリオットは意味もなく、すべすべしたパンジーの花びらを指先でこすった。
「大げさだな。王宮の庭だってイギリスを手本にしてるんだから、このスタイルの庭なんて見慣れてるだろ」
「はい。ですがここはとても……懐かしい、と感じました」
「……変なやつ」
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