八月六日、雨。

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「あの目を持っているだけで、あの子が選ばれない理由なんてないと思うよ。偶然、何度も芸能界に入るチャンスがやってくるんじゃない。この先、何回防いだところで、高平沙織は芸能界に入っちゃうんだよ。必然的にね。歴史がそっちへ復元しようと動いていく」 「歴史の復元ね……。たまにそういうのあるよね。どうやってもその運命が変わらない人」 「うん。彼女はなるべくしてガールズダンスグループに入るんだ。その未来を変えられないならば、僕らは無駄な労力は避けるべきだよ」 「まぁいいわ。クライアントへの説明をしてくれるなら、私はどうしようと構わないけどね」 「冷たいなぁ」 「クレーム対応は私の仕事じゃないの」  赤い傘をくるりと回転させて雨の露を落とすと、唯華は真那斗に背を向けて歩き始めた。  真那斗は振り返り、写真スタジオを見上げた。 「未来でまた会いましょう」  そう呟くと真那斗は笑みを浮かべた。 「何してんのよ、早く帰らないとダメなんですけど?」  真那斗が後ろをついてこないことに気づいた唯華が言った。 「ああ、もうそんな時間?」 「そうよ。もう次の依頼は来ているんだから」 「やれやれ……。人遣いが荒いなぁ」  真那斗は苦笑して歩き始めた。  そして、数秒後、真那斗と唯華は消えた。  雨と時間だけは止まらず流れ続けた。
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