七月五日、晴れ。

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 男は沙織をカフェに誘った。  沙織は、状況を掴めていない柚葉に「また月曜に説明するから」と言って、帰ってもらった。  多くの人がごった返すカフェ、窓際の席に男と沙織は座った。男はアイスカフェラテ、沙織はアイスティー、代金は男が支払った。 「僕は月島真那斗(つきしままなと)。あなたは?」  男が名乗った。「あなたは?」と真那斗に聞かれたので、 「あ、高平沙織です」  と沙織もまた答えた。  真那斗は沙織の目をしばらく見ていた。その深い湖のような瞳に吸い込まれそうな感覚があった。 「僕が未来から来たってよくわかりましたね」  真那斗はアイスカフェラテを口にした。  よくよく見ると綺麗な顔をした男だなと沙織は思った。そして整った顔立ちよりも際立つのは、肌の色の白さだた。夏だというのに色白で、ほとんど日に焼けたことがないように見えた。 「あなたがオーディション、学校、ここ渋谷で私の都合悪いときばかりに現れたからね。あなたが何かの方法でそれぞれを仕組んだでしょ?」 「……気になる発言が混ざってますが、『仕組んだ』というのはあってます。僕は未来からやってきて、過去に起きた出来事を変える仕事をしています。クライアントから依頼を受けて、大きな歴史の道筋を変えるものでなければ引き受けてるんです。割とお金が儲かるお仕事です。あ、タイムスリップの仕組みは企業秘密です」  わざとらしく真那斗は手を口に当てた。 「信じる、信じないはあなたの自由です」 「でも、現実として私は邪魔されている……。三つともあなたがやったの?」 「そうです。五月、イベントの中止を依頼されました。なので、テロ予告を出しました。もちろん、爆弾も何も仕掛けていません」 「実際に爆弾は見つからなかったって、確かにニュースでやってたわ」  真那斗は頷いた。「人を傷つけることはしたくないので」と言葉を添えて。 「海外サーバーから接続してIPアドレスの逆探知はできないようにしました。この時代の技術では永遠に突き止められないと思います。一応、中止されるか見届けるため当日も潜入してましたけど。そこを見られたみたいですね」  真那斗は笑った。
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