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長い髪が夜風に揺れる。
「…ありゃあ、星出てないなぁ。
曇ってるから隠れちゃってんの。
邪魔しに来た雲に負けちゃったんだよ、
せっかくルンルンでここまで来たのになぁ」
そこまで悲しくなさそうな顔をして彼女は言った。
ほっとするも、その表情に奥があるのかと顔を覗き込みかけて…やめる。
いつの間にか彼女は僕を見て微笑んでいたから。
「君は、将来あの雲のもっと上に行くんだよね。
雲を飛び越えて、空も飛び越えて、宇宙まで飛び出しちゃうんだよね」
彼女がその場にすとんと座ったから、その隣に僕も腰を下ろした。
未知の光と闇が潜む夜空に伸ばした彼女の手が、
雲の隙間から微かに見えた月に照らされ、
透き通ったように透明な光を帯びる。
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