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みちくさくん 一章
「夢中になれるものを見つけて人生を楽しく生きよう!」
時間は夜も深けてきた深夜二十三時、蒸し暑さで喉が乾きアイスと麦茶を買おうとやってきた家の近くにあるコンビニの雑誌コーナーでそれは目に付いた。
タイムリーだなと心の中でつぶやく。
呟いたのにはワケがあった。
ここに来る前に男でも危ないし、俺もアイス食いたいから行く、と言って着いてきた二十一歳の兄、ともやから道すがら
(お前も夢中になれるものがあったなら人生楽しいかもな)
そんなこと言われた。
なんで今になって、それを言われて1番に頭に浮かんだ言葉はそれだった。何も言わず、いや、言い返せなくて少し後ろを歩いて、何も聞こえませんでした風を装いながらやってきた。
コンビニに来るといつも雑誌コーナーの方へ来てしまう癖がよくなかった、今の自分に見たくないものを見せてしまったのだ。
立ち読みをしている人の雑誌の表紙にデカデカと乗っている文字は語りかけてきているように見えた。
僕にはなんもないよとそもそもなんでよりによってそんなもの見てんのーと見ず知らずの人に心の中で八つ当たりをしながらそれから視線を外しながら飲み物コーナーで麦茶を取り、アイスのコーナーへ向かう。
お気に入りはチョコミント、中学生の頃に歯磨きの味がすると友達に言われて喧嘩になったが俺は好きだ。これを食べないなんて人生の半分損してるとも思う。
「いおりまたそれ?ほんと好きなお前は!毎年やな!」
さっきのことを気にもとめていない様子で兄が聞いてくる。
ちょっとぶすっとした表情で「別にいいだろ、好きなんだから」と答えてからこういうところがまだ子供なのか、と思ってしまう。
兄は(いいのがないからいらない)と言って何も買わなかったので特に何もなく会計をすまし、店を出た。
二人とも無言の帰路に夏の風物詩の蛙の鳴き声はやけに耳に残った。
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