65人が本棚に入れています
本棚に追加
なっちゃんの家を訪ねた日から、もう1ヶ月半以上が経過していた。
あの日たくさん泣いてから、不思議と涙は出ていない。
バイトしたり、大学の友達と遊んだり、レポートに取り組んだり。
たまには、ボランティアに参加したりもして。
それなりに普通に生活していた。
でも、右手の指輪だけは外せなかった。
外したくなかった。
「いつから?」
「何が?」
「何が?…じゃないでしょ。田川さん…絶対華澄に気があるよね?」
「そうかな?」
「はぁ……。分かってるくせに。」
「えっ?うん…なんとなくはね…。」
バイトを終え、作っておいたカレーとサラダの夕食中。
梓は、容赦なく突っ込んでくる。
梓には、なっちゃんとのことを、その都度話しているので、今の状況は把握済み。
「そんなに悪い印象ではなかったけどな…。礼儀正しいし、清潔感があってさ。」
「そう…?」
「うん。モテるでしょ、田川さん?」
「知らない。学部違うし…。」
そう言いながら、左手の指で、右手の指輪を撫でた。
最初のコメントを投稿しよう!