空白の時間 ~華澄side~

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なっちゃんと会わなくなってから、指先で指輪を撫でるのが、わたしの癖になっていた。 不安になったり、気持ちが落ち着かない時、決まって指輪を撫でている自分に気付いた。 「連絡すればいいじゃん。会いたいんでしょ?」 「……。」 「会いたくないの?」 「よく、分かんないんだ…自分でも。」 それが、素直な気持ちだった。 会いたいけれど会いたくない。 会ったとしても、何を話せばいいんだろう? 臆病者のわたしが顔を出す。 「意地を張ってても、いいことないよ。いろいろ考えるには、いい機会かもしれないけど…。」 梓は言った。 「いろいろね……。」 「だって、夏美先輩と長いんでしょ?」 「うん、まあね…。」 「ちなみに、夏美先輩と一緒にいる時の華澄、わたしは好きだけどな…。」 「梓…。」 「まぁ、今のは独り言ということで…。」 梓が笑った。
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