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A駅の階段を大勢の人々が降りて行く。A駅は都内にある駅だが、新宿駅や品川駅等の主要駅と違い、私鉄で改札口も一つしかない小さな駅だった。ただ、近年の再開発により元々は工場地帯の土地をオフィス街に変えたことにより、駅の利用者が増加した。
A駅のキャパシティには見合っていない人の多さだ。
その、人混みの端を晴海は歩いていた。主な出勤時間帯よりは少し早めだが、企業に寄っては出勤時間帯が早いのか、それとも個々の早出残業なのかはわからなかったが、人の多さは確かだった。
人より歩くのが遅かった晴海は流れに沿って歩くのが苦手だった。
彼女は駅の階段を降りると直ぐに駅の脇道にある小道に入って行った。
大勢の人々は皆、駅の前の少し広めの道を真っ直ぐ進んでいた。この道は少し傾斜があり、駅の前から人の群れが遥か先まで続いているのが見えた。
晴海が入った小道は人がほぼ歩いていなかった。こちらの道は晴海が働くオフィス街へ行くには遠回りだった。
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