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同じようなガラス張り高層ビルが幾つかある中、晴海は一番奥のビルの入った。メインエレベーターがあるビル中央には向かわず、入り口横にある扉を開けた。扉の向こうには階段があり、晴海は上って行った。
山中さんも今頃は会社に着いて、働いてるのかな?
山中はA駅の一つ前の駅で働いていた。
晴海と違い、山中の仕事場は駅から徒歩1分の所だと晴海は知っていた。
山中さん最近は出勤時間早い気がする。仕事忙しいのかな?
階段を一歩、一歩ゆっくりと晴海は上がって行く。晴海は決して運動が得意な方ではなかったが、エレベーターは苦手だった。
晴海が勤務する人材派遣会社の本社はビルの4階に入っていたので、階段はそんなに苦ではなかった。
その時、階段の下の方で物音がした。晴海は3階の踊場から下の階を見下ろした。
人影は見かけなかったが、晴海は誰かの視線を感じた。
あの時からずっと感じてる視線。
恐怖の視線。
あの男の視線。
晴海の脳裏にあの暗い雨の日が過ぎった。
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