或る雨の日に…

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 彼女はカードキーをガラス戸の横の端末にかざすとドアが開かれた。  広いオフィスの右端の小さな部屋に入って行った。その部屋の中心には3つの机がくっついて置かれていた。その周りにはキャビネットが置かれていた。  晴海は自分のデスク脇にバッグを置くと、 アルコール除菌と書かれたプラスチックの箱を開け、1枚の湿った紙を引き出して、その紙でデスクの上や周りを拭き始めた。  課長、まだ忘れられないのかなあ。  晴海は上司のデスクに置いてあるクリスタルの置き時計を見ていた。その時計を上司は恋人から貰ったと皆に言っていた。  私が選んだ時計。  晴海は心の中で呟いた。  晴海の部署は晴海と女性課長と先輩の3人だけの小さな課で主な仕事は派遣会社に登録しているスタッフの個人情報の管理だった。  二人が出勤する前に何時もの習慣を終えると、晴海はパソコンの前で淡々と仕事を始めた。  パソコンの横に置かれた卓上カレンダーが目に留まった。アマリリスの写真が載っていた。  もうすぐ。朝家を出る時は蕾だったけど、もうすぐ季節が訪れる。  嬉しい反面、不安な気持ちが頭を過ぎった。  あの紫陽花は無事咲くのだろうか?  
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