或る雨の日に…

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長めの坂道をゆっくりと晴海は上がって行く。左手には茶色のバッグを持っていた。右手には白いビニール袋を持っていた。  流石に重い。  晴海は緑園寺前駅の一つ前の駅で降りて、駅前のスーパーでじゃがいもと人参を買った事を後悔していた。  重いなあ。  その駅から歩いて帰る所だが、一つ前の駅といっても、緑園寺前の駅との距離はそんなになく、緑園寺前駅のホームから隣の駅のホームが裸眼で見える程だった。  それでも今の晴海には坂道の上にある自分の家を遥か遠くに感じた。  坂道の中間辺りに差し掛かる所で、背中に寒気がした。  もう、暖かい季節は過ぎていて、空気も夏へと近づいている。ましてや晴海は今、息も上がっていて、額に薄ら汗をかいている。  寒気等感じる訳がないのだ。  次に突き刺さるような視線を感じた。  晴海は振り返ると、辺りを見渡した。と、いってもそんなに広い道ではなく、車が行き違うのもやっとな位の道端だ。  晴海から少し離れた、坂道の下の方にスーツを着た男が立っていた。  晴海は彼の方に目を向けた時、彼が目を逸らした気がした。  気のせいかあ?  坂道は住宅地だったが街頭もあり、はっきりとは見えなかったが、男の顔を何となく確認することができた。  晴海はその顔に見覚えはなかった。  右手に持っているビニール袋をバッグを持つ左手に移すと、晴海は右手でバッグからスマートフォンを取り出した。  静かな坂道を歩く晴海の背後で靴音が響いていた。      
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