或る雨の日に…

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或る雨の日に…

 暗闇の中で雨の音が響く。  降り続く雨。  止まない雨音。  この雨にも終わりはあるのかなあ?    カーン…  雨が窓に当たる音が耳の奥まで響く。  そして、耳の奥で反芻する。  意識が朦朧とする。もう何日もまともに寝ていない。しっかりしないといけないのに。  混濁する意識の中、私は小さな窓から暗く濁った外を見た。  向かいの灰色の壁が見える。  雨水がその壁の凹凸に沿って流れている。  その雨水の上をゆっくりと動く小さな白い生き物…と、その先には紫陽花が咲いている花壇が見えた。その花壇の側には少し大きい茶色い生き物が佇んでる。  私はその生き物に向けて心の中で逃げてと叫んだけど…  私の叫びなんて無力なものだって知っていた。  先程まで花壇の側で動きを止めていた一匹の茶色い生き物は壁に近づくと薄紅の舌を伸ばし、その小さな白い生き物を口の中に運んだ。  カタツムリは一瞬にしてその命を奪われた。  私もあのカタツムリと同じだ。  この状況から逃げられない。  部屋の中で物音がした。  私はゆっくりと振り返るとあの男の姿が視界に入った。  もう、終わりだ。  暗闇の中で響く雨音に混ざってサイレンが響き渡る。  外の花壇は雨水に打たれて、荒れて行く。  流れて行く茶色い土。  紫陽花は雨を浴びて意気揚々としている。  私は紫陽花に助けを求める。
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