父のお土産

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" まるで子供のように純粋で罪のない " そんな言葉をよく耳にするが それは全く逆だと私は常々思っている。 そう、むしろ子供はその純粋さゆえ 時に無意識のうちに 残酷な仕打ちをしてしまうものである。 幼年期、私は父親があまり好きではなかった 無口で、いつも怒った表情をしているようで そして私が起きた頃にはもう仕事に行っている 会話どころか顔を見ることすらあまり無かった。 まだ私が幼稚園に通っていた頃 自営で出張の多かった父は 時々おみやげにおもちゃを買ってきてくれた。 それが多忙で無口な父と私との 唯一のコミュニケーションでもあった。 ただ私が好きなキャラクターを 父が知っているはずもない、 私と一緒に子供番組を観ることなど 一度としてなかったのだから。 おそらく母から聞かされていたのだろう、 父からのおみやげは不思議なことに いつでも僕の好きなキャラクターだった。 ある日、出張に出かける前に父が珍しく 今回は何が欲しいかと尋ねてきた。 私は迷わず当時人気のあった ヒーロー戦隊ものの人形をねだった。 2 、3日して父が大事そうに ガーゼのハンカチに包んだ小さな箱を 持って帰ってきた。 期待に胸を膨らませてその包みを開いてみると それは私が心待ちにしていた ヒーローの人形ではなく 何とも間の抜けた あまり格好がいいとは言えないロボットだった。
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