父のお土産

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「こんなのいらない!」 私はそう言うと 無造作にそのロボットを投げ捨てて 泣きながら寝室へ行ってしまった。 せっかく買って来てくれたのだから、と 諭す母の言葉にも耳を貸さず、 もちろんおもちゃに目もくれずに。 それでも父は私の喜ぶ顔が見たかったのだろう わざわざ私が眠る枕もとに そのロボットを置いてくれたのだが、 目覚めた私は "欲しかったのはこれじゃない" とばかりに 廊下に放り出してしまった。 そのロボットはいつしか おもちゃ箱の片隅に追いやられ 遂には何処に行ったのかさえも わからなくなってしまった。 唯一、覚えていることと言えば 何とも申し訳なさそうな父の笑顔だけ… そして私が中学生になった頃 押し入れの掃除をしていると 奥の方から何かが出てきた。 それは、あの日父が買ってきた 間の抜けた顔のロボットだった。 ー こんなとこにいたのか? 思わず私はそのおもちゃに話しかけた。 きっとこのロボットも 好きな人に買ってもらってたなら もっと大事にされてたんだろうな… そんな事を考えながら そのロボットを眺めていると 何とも言えない複雑な思いが押し寄せてきた。 どうして私はあの日 こんなにもこのロボットを拒んだのだろう? どうして父にあんなに心ない言葉を 投げかけたのだろう?
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