父のお土産

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そんな罪の意識と、普段は見せない あの日の父の苦笑いのような笑顔が重なった時 私は大粒の涙を流しながら そのロボットを握り締めていた。 「俺、ひどいこと…言っちゃったな」 そしてこの涙がこれまで流した涙とは 種類が違うのだ、と気付いた。 涙は悲しい時だけに流れるものではない、 この日私は人を思いやる気持ちが ほんの少しだけ理解できた。 それは "残酷な子供" から ほんの数ミリ心が成長した瞬間でもあった。 そして私はその小さな罪悪感を誰にも言えずに 胸にしまったまま年を重ねた。 いつか話さなきゃ・・・ 大人になって思い立った私は そのおもちゃのエピソードを父に告げたのだが 当の本人はそんなエピソードなど すっかり忘れている様子で 何だか拍子抜けしたのと同時に いつまでもそんな心の傷を抱えているのは 所詮、私だけで 結局、父にとってはその程度の出来事なのだと 悄然とした思いにかられた。 あの日、 私が流した涙は一体何だったのだろう 大人になるために、人として成長するために 必要な涙、ではなかったのか? そして月日は流れ、私も今では父親になった 少しは人の気持ちがわかる人間に なっているつもりだ。
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