偏見と勘違い

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ

偏見と勘違い

misunderstand 見当も付かない・・・ 今日はあいにく、いつも使っているBluetooth イヤホンを忘れてきてしまったから、電車が線路上を走る音がいつもよりも大きく聞こえる。 通学中、一応学生だし、なんとなくで毎日単語帳を開いている。 文字通り「開いている」だけで、どのページをめくっても全くわからないし、いつもは無機質な羅列と にらめっこしながら好きな音楽を聴いているのだが 今日はそう言うわけにもいかない。 だからといっていつどこで使うかもわからない異国の言語を覚える気にはならなかった。 駅までまだ随分と時間がある。 寝ようかとも思ったが、寝過ごしたらそれまでだ。 いよいよほんとに何もすることがない 試しに窓の外でも眺めてみたが、後には海岸が広がっているだけで見飽きた景色だ。 やっぱり寝てしまおう。そう思って首の向きをを元に戻した時だった。 感情の色のない車内で何かに惹かれた気がした。 向かい側の席を見てみるとそこには一人の少女が座っていた。 何故だかは分からないけど、周りの人物、景色が全てモノクロで、彼女が座っている場所だけが鮮やかに色づいて見えた。 どうやら制服を見るところうちの高校の生徒のようだ。 今まで周りなんて気にしたことがなかったから、同じ電車に同じ高校の生徒が乗っているなんて気づいていなかった。 彼女は本を読んでいるようだった。 「Pride and Prejudice 」 英語で綴られたその題名はさっぱり読めなかった。 でもその本を見た瞬間本当に、本当に少しだけ悲しくなった。 そのまま本の題名といつもの調子で睨めっこしていたら、彼女が急に本を閉じたから、一瞬彼女の目線と僕の目線が交差した。 急いで目線をずらした。 きっと真面目な子なんだろうなと思った。あんな難しそうな英語の本を読んでいるし、俺とは大違いだ。 そう考えると、これ以上近づくべきじゃない気がした。 俺はきっと彼女の横には立てないし、関わるべきじゃないんだろうな。 「次は〇〇駅〜〇〇駅〜」 いつも聞き馴染んでいる車掌の声が今日は耳の奥に響いていた。 もう一度だけ彼女を見たいと思った。 そっと目線を向かいに向けた そこにはただ緑のシートが太陽の光を反射しているだけで誰もいなかった。 少し首を右動かすと彼女の後ろ姿が見えた。 急いで席を立ち、彼女とは別の左側のドアに向かった 一瞬悲しい気もしたが、少ししたら、これでよかったのかなと思えた。 もう一度彼女の顔を見てしまったらきっと声をかけてしまうから。 今日もまたいつもの1日が始まる。 右手に開かれた単語帳をふと見ると 「misunderstands」 そう書かれていた。 意味はわからなかった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!