『小学校入学前』

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『小学校入学前』

今から40年以上も前の出来事… 普通より下の環境で、幼稚園も保育園も行かずに、小学校入学を控えたとある日… 母から平仮名を教えてもらっていた… どうしても『あ』が書けなかった私… イライラし始める母… 『こう書くの!!』と言いながら、何度も書く母の『あ』の文字は、段々と濃くて太くなって、母の声も大きくて怒鳴る様な声になり… 『何でこんなのが書けないんだよ!?(怒)「のりゆき」(私の弟)見なくちゃいけないのに、「あんた」にかまってらんない!!(怒)勝手にやってろ!!(怒)』 何で「のりゆき」って名前は言うのに、私の名前は言ってくれないの? 「ようこ」って名前あるのに… 書けなくて怒られた事… 名前を言ってくれずにほっとかれた事… 怖くてなのか、悲しくてなのか、泣く事しか出来なかった… 「あんた」… 母から言われる様になった、最初の記憶… その後も、弟ばかりを可愛がる母… 弟に泣かされる私に、 母…『あんたが何かしたからでしょ!』 『どうせあんたが何かしたからでしょ!』 何度も言われたっけ…(笑) 母からの「ようこ」と名前を呼ばれるよりも、「あんた」と呼ばれる事が多かった私… この年(50才)になっても、母からの「あんた」と云う言葉は、『呪いの言葉』となり、私の中のやまない雨となった… 母から平仮名を教えて貰って、暫くした後… 小学校までの通学路を教えて貰うのに、父と一緒に手を繋いで歩いた雨上がりの晴れた朝… もの凄く天気は良いのに、地面は濡れてる… 学校までの目印を優しく教えてくれる父… 平仮名も、結局父に教えて貰って書ける様になった。 父からは、「お前」と言われる事は何回かあったけど、きちんと「ようこ」と名前を言ってくれていた… 20才の時に亡くなった父… 小学校に上がってからは、親に甘える事も手を繋ぐ事もしなくなったけど、親と手を繋いだ最後の記憶が、この父と歩いた雨上がりの晴れた朝。 兄と弟には厳しかったけど、私には優しくて、反発して何も言わなくても、私の気持ちを解ってくれていた… 父との「一番の思い出」は、やっぱりこの『雨上がりの晴れた朝』… 母とのわだかまりの始まりの『やまない雨』 父との一番の思い出の『雨上がり』 同じ時期に起きた、私の忘れられない出来事…『やまない雨と雨上がり』 『完』
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