3人が本棚に入れています
本棚に追加
昔から身体が弱かった。自慢じゃないがそんじょそこらのスレンダーレディよりウンと貧弱だと自分では思っている。
そんな訳で産まれた時からハードモードまっしぐらな俺は保育園から中学に至るまでロクに友人も出来ず、暇があれば体調を崩し保健室で休むのだった。
……そして高校。俺は今2年生だ。
友人はいないと思うか? 結論から言おう、いる。たった1人だが、一応はいるのだ。
「あ、端辺。今日も来たんだね」
綺麗な色の魚と共にたゆとう川底の泥のように茶みがかった涅色の髪を肩甲骨までサラリと靡かせるこの女は俺が校内で唯一話す相手。名を水森楠音と言う。
楠音は身体が弱かった。
聞く所によるとまぁまあ重度の喘息らしい。俺にはその辛さは分からないが、話しているとたまに苦しそうに呼吸を乱しているのできっとそれは難儀な事なのだろう。
「辛い」
「休みな、静かにしててあげるから」
「ああ、そうさせてもらうよ」
俺はベッドに横たわり身体全体から感じる不快感と痛みから逃げるように布団を被り20分ほど仮眠した。するとだいぶ良くなる。
「ん……」
目を開け、辺りを見回す。
すると目の前に楠音が立っていた。
「何してんだ」
「ん? いや、よく寝てるなぁと思って」
「立ってて辛くないのか?」
「少しくらいならへーき、それより見てよ、野球部が今日もいるよ」
窓からは夕日が差し込み、俺はつい目を細める。
その先にユニフォームを青春色に染めた野球部数人が何やら練習をしていた。
ぼんやり見てると楠音がルビー色の瞳を輝かせこう言う。
「良いなぁ、私もあんな風に動き回りたいな」
「そうか? 俺は遠慮しとくよ、スポーツは苦手なんだ」
「それは面白さを知らないだけなんじゃないの?」
「いや違うね、もし身体が健康でもスポーツなんてやりたくない。何で好き好んで辛い事をせにゃならんのだ」
「あはは、端辺らしいね」
楠音は控えめにクスクスと笑い近くの椅子に腰掛ける。そしてスースーと二、三回深呼吸をして呼吸を整える。
「おい大丈夫か……やっぱり辛いんじゃ」
「大丈夫……ちょっと笑い疲れただけ、ほんの少し……」
そうは言うものの辛そうに顔を歪める楠音。俺は心配になり身体を起こし彼女の傍に駆け寄る。
「ったく、無理すんなって……薬は飲んだか?」
「こほ、っ、はぁ……ポケットに……」
楠音は制服のポケットから吸引式の喘息の薬を取り出し、それを口に当てカチッと上部を押す。そして中の薬を吸い込む。
「水持ってくる」
「っ、大丈夫、端辺も辛いでしょ」
「お前もな、いいからじっとしてろ」
俺は身体を起こし冷蔵庫から冷水を出す。
そしてそれをコップに注ぎ楠音に渡す。
「こほっ、……ありがと」
「ゆっくり飲めよ」
「うん」
全く心配だ。
でも、こういう何でもない時間が案外楽しかったりする。初めての感覚、これは何だろうか。
その後俺らは他愛ない話をしながら楠音の親が車で迎えに来てくれるまで過ごすのだった。
※
ある日。
その日は運動会だった。
生徒達はこの日を待ち望んでいたらしいが、当然身体の弱い端辺にとっては関係の無い日だった。
端辺は今日も今日とて保健室で休みながら外から微かに聞こえる生徒達の歓声やセミの鳴き声を聞き流していた。
「運動会、やってるね」
「ああ」
端辺は楠音にそう答えると布団を被りうずくまった。
どうせ参加出来ないのだから休みにしてもらいたいものだと端辺は思っていた。
……本当は羨ましかったのだ。
運動がしたい訳ではない。普通に行事に参加したいのだ。普通に参加し皆と笑い合い汗を流して「マジめんどくせー」なんて言いながらも何だかんだで楽しみ、そして泥が付いた体育着の上に乾いたワイシャツを羽織り夏の音色を聞きながら友人と自転車に乗りながら帰りたいと、たったそれだけをしたかったのだ。
「……っ」
「端辺?」
端辺は泣いていた。
何で自分には普通の事が出来ないとかと、別に特別な事がしたい訳じゃない。ただ皆と同じ事がしたいだけなのに……そう思うと自分か酷く惨めに見えて余計に瞳を濡らすのだった。
「泣いてるの?」
「……そうだよ、泣いてるよ……」
「辛い?」
隣のベッドから聞こえる優しげな楠音の声。
それを聞いていたらますます悲しくなってきて、声まで濡らして泣くのだった。
「端辺……こっち見て」
「何だよ……っ、もうほっといてくれ……」
「見てよ……」
「見られたくないんだよ……っ、こんなに惨めなのに泣きっ面までも見せられる訳ないだろ…………っ」
「じゃあそのままでいいから……私の話を聞いて」
きっと楠音は端辺が泣いている理由が分かったのだろう。だから声を穏やかにし、彼にこう語りかけた。
「私は……端辺が惨めなんて思わないよ。他の人と違っても、端辺は端辺だよ」
「それがどうしたって言うんだよ……もうどうして良いか、分からないよ」
少しの沈黙があった後、楠音は静かな口調でこう話し始める。
「ね、こういう考えはできない? 私達は特別な体験をしているって」
「特別……?」
端辺は身体の向きを変えて楠音の方を見るとそう訊いた。楠音は続ける。
「そう、特別なこと……窓の外の人達、あの人達はここの冷房が効いて快適な事を知らない、微かに部屋から聴こえるオルゴールの音色の素晴らしさを知らない、そして2人だけで話す事の愉快さを知らないんだ。それを知ってるのは私と端辺だけ……そうは、思えないかな……?」
「……それは」
楠音の涅色の黒髪が風なんて入ってきてないのにフワリと揺れる。
ほんの少し、たったほんの少しだけ端辺は楠音が大人っぽく思えたのだった。
「寂しいよ……俺、友達が欲しいよ」
「……それってさ」
横髪を指でクルッと絡めてモジモジとすると、楠音はこう呟いた。
「それって、私じゃダメ……かな」
頬を朱色に染めてそう言う楠音に、端辺の心は完全に奪われた。
だから改めて楠音の方を向き直すと、お礼の言葉を述べた。
「ありがとう……」
「ふふ、いーよ」
いつの間にか2人の距離が近くなっていた。心だけではなく、身体の距離までもだ。
お互い見つめ合う。凄く良い雰囲気だった。
「ね、お願いがあるんだけど」
「何だ」
「ちゅー、しない?」
「唐突だな、友達は辞めるのか?」
「ううん、違うよ。友達だからするの。端辺の事を大切に思ってるから……するんだよ」
「……そうか」
どちらとも言わず唇を寄せた。
お互いの呼吸穴がぴったりと合わさる。
「ん……」
楠音のストロベリー色の唇が端辺の元から離れる。
つつっと唾液が糸になって2人を結んだ。まるでまだキスが足りないとでも言うかのように……。
「もっと……」
「楠音……」
2回目のキスはもう少し濃厚だった。
唇を鳥が啄むように何度も何度も這わせ、お互いの好きを高めていった。
「手……握って」
「うん」
恋人繋ぎなんてお互い始めてした。
そのくらい2人の想いは本気だった。
愛する人同士がする本気のキスは、それから数分続き――――
「はぁ、はぁ……こほっ、はし、べ……」
「辛くないか? あまり無理はしない方が良い」
「ふふ、ありがと」
楠音はリュックから水筒を取り出しコクコクと水を飲む。端辺も買ってきたスポーツ飲料の蓋を開け口を付ける。そしてお互いニッコリと微笑んだ。
「しちゃったね」
「ああ……しちゃったな」
と、言いながら楠音の視線は端辺の下半身に向いていた。そこには先程のキッスで興奮して固くなった高校生の勃起ペニスがズボンの中で背伸びをしていた。
「出したい……、よね」
「まあ、正直……」
はぁ、と熱のこもった吐息を漏らすと楠音は端辺のベッドまで来て、真剣な瞳でこう言った。
「いいよ、端辺のなら……大丈夫」
「楠音……」
楠音は端辺のズボンのチャックをジジっと開ける。その仕草に端辺の情欲は刺激された。
そして露になった端辺のペニス。所々青筋が浮いて怒張しており、イカのスルメのような刺激臭がした。だが楠音は不思議な事にその匂いがとても愛おしく思え、何だか嗅いでいると秘部が湿った感覚がするのだった。
「凄い……おっきい」
「楠音が可愛くて……」
「っ、もぉ……いきなりそーゆー事言わないの……」
そうは言いながら内心嬉しい楠音。
だから髪をかき上げ、まずは鈴口を口で包む。
するとピクっと肉棒全体が跳ね、端辺の顔が愉悦で歪む。
「あ……ぅ、やばっ」
「チュ、チュプ……んんっ……ろう?」
「うん……気持ち良いよ……」
好きな人のペニスを咥えている、好きな人が自分の口で気持ちよくなっている。
そういう事実の一つ一つが楠音のひ弱な身体を潤し、確実に愉悦の花を咲かせていったのだった。
楠音は端辺の逸物の根元からカリ裏の敏感な所までを唾液の絡んだ舌でなぞった。すると端辺が弱々しい声を漏らす。
「すご、くすねっ……出そう」
「んぁ……いーよ、出して」
「でも……」
端辺は口内射精を望んでいなかった。
それは彼女を苦しめる事になるのではないかと、そう思っていた。
だから楠音の肩を押し、身体を離そうとする。
「苦しいでしょ? 出していーよ」
「ダメだよ……お前身体弱いんだから」
「じゃあさ……ティッシュ越しなら問題ない……?」
「え、と……」
楠音はカゴに畳まれていた制服からポケットティッシュを取り出し、蠱惑的な笑みを浮かべる。
その仕草の可愛さが、端辺の心を揺れ動かした。
「お願いできるか……」
「ふふ、じゃあじっとしてて」
楠音はポケットティッシュから紙を何枚か取り出すと、それを束ねて端辺の亀頭の周りに被せた。
そしてゆっくりと優しく優しく扱き始めたのだった。
「どう、かな」
「ああ、良いよ……最高だ」
「そか……嬉しい」
決して上手くはない楠音のハンドピストンだったが、相手の事を思っている気持ちが伝わってきて端辺の陰茎はビクンビクンと跳ね喜ぶのだった。
シュッシュッと上へ下へ輪っか状になった楠音の細長く繊細な青白い指が逸物を刺激する度に、端辺は脳に甘く響く愉悦を感じる。そうすると肉砲の先が赤黒く腫れて膨らみDNAを吐き出す準備をするのだった。
「そろそろ……」
「くる? 出ちゃう?」
「ああ……ちょっとヤバい」
「手、握っててあげようか?」
右手で端辺のペニスを刺激しながら左手で恋人繋ぎをした。楠音が更に肉棒を刺激するとグチュグチュという水音と共に端辺の手を握る力が強くなる。そしてクライマックスを迎える。
「くすねっ、出る……っ、ごめ」
「ここにいるよ……出して、端辺の気持ちいいの……ティッシュの中に、全部全部……っ……」
瞬間、
「うぁ、出っ」
ビクンと肉の塊が大きく跳ね、尿道の先から粘っこい白濁液が大量放出した。端辺は本気で楠音の事が好きだったし結婚したり出来たらセックスをしたいと思っていた。だから自然と吐き出される精子の量も自慰をする時の何倍も多くなった。
「ごめ、っ、止まらな……」
「うわ、すっごい量……ティッシュから溢れちゃった」
ティッシュの中が本来腟内に流し込まれるはずだった精子のヌメリと匂いでいっぱいになり溢れ出す。量が多いので粘り気のある液がティッシュからはみ出し垂れてくる。
「どうしよ……ゴミ箱に流すか? でも届かないな……」
「大丈夫……んっ」
楠音はティッシュ内で包まれたザーメンの泉を口ですすった。ジュルルっと本来女の子が出してはいけない下品な音が2人っきりの保健室に響く。
「んんっ……べぇっ、……はぁ、こぼさずに済んだね」
楠音は精液を口に含んだままゴミ箱内にそれを吐き出し、こびり付いた粘液を舌で舐め取って妖艶な笑みを浮かべる。
その笑顔のあまりの美麗さに、端辺の息子が再び立ち上がった。
楠音はクスッと笑い、先程まで愛する人のペニスを扱いていた人差し指を口元に当て、こう愛の言葉を囁くのだった。
「続きは、また今度ね……?」
今年の夏は暑くなるぞ、端辺は期待と興奮を隠した顔でそう思うのだった。窓からは生徒達の楽しげな声と蝉の合唱が今なお絶え間なく聞こえている……。
最初のコメントを投稿しよう!