決着

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決着

ボクはあの日からずっと島田さんとこのまま友達関係を続けてもいいのか悩んでいた。ボクは島田さんを陰ながら、支えたいと思っている。ボクの存在が夫婦関係を危ぶませるということはないにしても、変に噂が立って、旦那さんが誤解してしまうことだってあり得る。それは、決して島田さんのためにはならない。ボクは島田さんにもう会うのはやめたほうがいいのではないかと提案しようと心に決めながらも言い出せずに、何度も会ってしまっている。 いつもの水曜日。島田さんが浮かない顔で現れたが、ひきつり笑顔を見せながら、元気なフリを装っていた。 「どうしたの?」と聞くと、 「本日、離婚しました!」とハッキリとした口調で報告してきた。 旦那さんとは付き合っていた時から、二股をかけられていたらしい。しかも、島田さんが本命ではなく、本命は別にいたという。それを知りながらも、島田さんはその人と別れられずにいた。旦那さんの本命も二股をかけていて、旦那さんは2番手だった。だから、本命さんは本命くんと結婚した。残った旦那さんは2番手の島田さんと結婚したという。 基本的に旦那さんは優しい人だという。結婚してから支配力が大きくなってキツイ言い方をする時があったが、暴力を振るうことはなかったらしい。ここ数ヶ月で本命さんは離婚して旦那さんとヨリを戻したらしい。それからというもの島田さんのいる家には物を取りに帰るだけだったと。本格的にヨリを戻して、再婚の話もしているらしい。だから、離婚して欲しいと言ってきたという。 しばらく、考えさせて欲しいと島田さんは言っていたようだが、このまま結婚生活を続けても惨めになるだけだと思い、離婚を決意したそうだ。そこまで一気に話すと、涙腺が崩壊してしまったように島田さんはボロボロと泣いてしまった。周りの目を気にしながら、必死に涙を抑えようとする姿が痛々しかった。そんな島田さんを見るのは辛かったが、ボクはもう中学生の頃のボクではない。逃げたりなんかしない。ボクは島田さんのためになることをするんだ!でも、こんな状況で何をすればいいのか分からない。どんな言葉を掛けていいのか分からない。ボクは周りの目を気にせず、童謡の「ふるさと」を口ずさんだ。島田さんの涙は一瞬止まり、ボクを見て優しい笑みを見せ、またハンカチを握り、顔を伏せて泣いていた。 島田さんが離婚したということはボクたちがこうして会うことになんの問題もないということだ。島田さんには申し訳ないが、今までどおり友達でいられることを嬉しく思った。
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