平凡

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平凡

ボクは自他共に認める平凡な男だ。イヤ、平凡以下だと言ってもいい。人と関わることが苦手でいつも一人で読書をしたり、ネットをしたりしている。もう28歳だというのに、彼女どころか友達と呼べる人さえいないが、一人でいることは全く苦痛ではなく、むしろ心地いい。今は一人暮らしをしているので、ますますズボラでおしゃれには疎く、目立たないようにしているためか背中も丸まって根暗感が満載なのも十分承知している。でも、いまさら変えるつもりはさらさらない。 ボクが生まれる前から両親は二人で喫茶店を経営している。祖父の代から続く老舗喫茶店で雑誌にも取り上げられるほど少し有名な喫茶店なので、ありがたいことにいつも客でいっぱいだ。特に週末は行列ができるほどなので、ボクもたまに手伝いに呼ばれる。 二人はいつも接客や店の準備で忙しそうにしていた。ボクに対して精いっぱいの愛情をかけてくれていたとは思うが、ボクも店が第一という意識を持っていたので、わがままを言わず、いつも大人しくしていた。両親は手のかからない子で楽だったと言っている。おそらく、子供の頃から両親とさえ、ろくに会話をしていなかったので、ボクは会話術というものを学ばずに大人になってしまったのだろう。 勉強は苦手な方ではなかったが、優秀というほどでもなかった。偏差値50程度の公立高校を卒業し、3流の大学を卒業した。こんな根暗で社交性のないボクでもありがたいことにすぐ就職することができた。パソコンが好きだったので、独自でパソコン技術を身につけていたことが強みになったようだ。とある会社の情報処理部でインターネットに関する仕事をしている。たまにパソコンが動かなくなったから見て欲しいと言われる程度で普段はパソコンに向き合っているだけの気軽な仕事をしている。 とくに特技も趣味もないまさに冴えない男だ。しかし、一つだけ自慢できることがある。それは女性の趣味がいいことだ。ボクが心を惹きつけられる女性は外見だけでなく、性格も美しく、だれからも愛されるような女性だ。美人は性格がキツイとか女性に嫌われるとかいわれるが、ボクの好きになる女性はいわゆる完璧な女性なのだ。そんな素晴らしい女性がボクに振り向いてくれるわけがないので、ボクはただその女性を見ているだけで満足だ。見ているだけといってもボクは決してストーカーのようなことはしない。相手を不快にさせるようなことは決してしないということがボクの恋愛におけるモットーだ。恋愛なんて言葉を使うと気恥ずかしいが、ボクのいう恋愛は一方的にボクだけが心をときめかしている状態のことをいう。 ボクの初恋は小学生5年生のときだった。転校生に恋をしたことだけ覚えている。どんな子だったのか記憶にはない。中学、高校、そして大学時代のバイト先にもときめく相手がいたのは覚えているが、今となってはどんな女性だったのか全く思い出せない。今、ボクは密かにときめいている女性がいる。この女性が今までの女性の中でも最高の女性だということは間違いない。
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