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お腹に宿った命
はっと気付いた。
周りを見渡すと、僕は病院の待合室の椅子に座っている。
一瞬、眠っていた様だ。僕は仕方ないと大きく首を振った。
会社は繁忙期に入り、ここ数週間、三時間弱の睡眠しか取れていなかった。でも結婚して八年、長い不妊治療の末に授かった僕達の娘の為、僕は加奈の定期健診には必ず付き合う事と決めていた。
しかし、そのことが繁忙期の業務の忙しさと相まって、僕の睡眠時間を削る原因の一つとなってしまった。
でも加奈とそのお腹に宿った娘は僕にとって、何よりも増して愛おしい存在だった。
先ほどの夢で見た、十五年前の加奈の僕への告白のシーンも、僕の大事な娘を育んでくれている加奈を愛おしく感じている気持ちの表れかもしれないと、僕は夢を反芻しながら自分の心臓が高鳴るのを感じていた。
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