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検査室から加奈が戻って来た。その顔は笑顔で溢れている。そして彼女は胸元にタブレットを抱えている。
「どうだった? 加奈?」
立ち上がった僕に彼女がタブレットを差し出した。
「これは?」
「これ見て、先生に三次元超音波測定したデーターを貰ったの……。八カ月の私達の娘……愛莉よ」
そのタブレットには、CGで描かれた娘の姿が見える。大きな頭、小さな身体。そして両手には小さな指が揃っている。
僕はジーンとして目に涙が浮かんで来るのを感じていた。
僕は加奈と手を繋ぎ、病院の建物の外に出た。横を歩く彼女はとても幸せそうに見える。
病院の駐車場で自分の車に近づいた。しかしドアの横のスペースが狭くてお腹の大きな加奈が車に乗り込むのは無理そうだった。
「加奈、ちょっと待って。車を出すから……」
僕がそう言うと彼女は大きく頷いて車の前で待ってくれた。
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