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突然の事故
その時だった。僕の耳に『キュルキュル!!』という激しい音が聴こえた。
僕がその音の方を振り向くと、老人の運転するシルバーのセダンが暴走しながら、真っ直ぐ加奈に向かっている。
「加奈! 危ない!」
僕が叫ぶと加奈は暴走車を振り向いた。
でもその時はもう避ける時間は残されていなかった。彼女はお腹を庇う様に車に背中を向けた。
その瞬間は全てがスローモーションの様に感じた。車は加奈をボンネットで跳ね飛ばすと、勢い良く、駐車場の壁に衝突した。
そして跳ね飛ばされた加奈は宙を舞って頭から地面に叩きつけられた。
僕は加奈に駆け寄った。彼女は頭から大量に出血している。
「加奈! 大丈夫か?」
僕が声を掛けると、彼女は虚ろな目で僕を見つめている。
「……た……隆文……。わ……私より……、あ……あかちゃん……助けて……」
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