子供遊戯

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「ねぇ、りょう君、何をしているの?」  可愛らしい声でそう聞かれて、良は作業を中断して声がする方を振り返った。  振り返った先には、同じクラスの江藤瞳(えとうひとみ)が好奇心で目をキラキラさせて良を見ていた。 「ひとみちゃん、僕、穴を掘っているんだよ。地面は、ずっとずっと下へ掘ったら、どうなっているんだろうって思って」  良は、土で汚れた手で鼻の下をこすった。 「へぇーっ。あっ! やだ、りょう君! 鼻の下、土で汚れてる!」 「えっ! 本当に?」  良は慌てて、手で鼻の下をこする。 「ふふっ、それじゃあ余計汚れちゃうわよ。コレ、使いなさいよ」  瞳は、青い蝶の絵の刺繍の入ったハンカチを良に差し出した。 「有り難う、ひとみちゃん。でも、良いよ。ハンカチが汚れちゃうよ」 「ママが洗濯したら綺麗になっちゃうから良いわよ。りょう君、ハンカチなんて持って無いんでしょ? 男の子って皆そうよね。言われないとハンカチなんて忘れちゃうの。私のパパもそうよ。使いなさいよ」  言われた通り、良はハンカチなんて持って無かったから、好意に甘えて瞳からハンカチを借りて汚れを落とした。 「どうも有り難う」 「別に……ねぇ、りょう君、穴なんか掘って楽しいの?」  瞳はハンカチを良から受け取りながら、可愛らしく首を傾げて言った。 「楽しいよ! 僕、最近、コレにハマってるんだ! 昨日もその前もやったんだ! いつか地底まで掘れるんじゃ無いかと思って。土の下の、下の、ずっと下には何が有るのか考えながら掘ってると凄いわくわくして来るんだよ!」  良はニカッと白い小さな歯を見せて笑って言った。  ここは小学校の校庭だ。  放課後の校庭には楽しく遊ぶ子供達の声が響き渡っている。  良と瞳は、この小学校の生徒で、同じクラスだった。  瞳が良に声を掛けるなんて事は普段はあまり無い事だ。  瞳は明るく活発な女の子で、クラスの人気者。  瞳の回りには、いつも沢山の友達がいる。  それに対して、良は、とても大人しい男の子だった。  いつも、教室の隅で一人で静かに本を読んでいる様な子で、放課後も友達とはあまり遊ばずに一人で遊ぶ事が多かった。  だから、瞳は、良は一人でいる事が好きなんだと思っていた。
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